■第7回勉強会の概要
日時 | : | 平成26年1月31日(金) |
場所 | : | TKPガーデンシティー札幌きょうさいサロン |
参加 | : | 19名(会員:14名、非会員:5名) |
講演1 | : | 「幹線道路の北海道特有課題解決に向けて」 |
講師 | : | 浅野 基樹 様 (独)土木研究所 寒地土木研究所 研究調整監 |
講演2 | : | 「LCCがもたらす新たな北海道、丘珠空港が担うべき新たな役割」 |
講師 | : | 武山 泰典 様 武山事務所(株) 代表取締役社長 |
■講演1
浅野講師は、北海道開発局に入庁し、道路を専門とする行政に携わった後、寒地土木研究所に在勤しています。研究所では、主に道路特性に関する研究に携わり、米国やヨーロッパでの経験を生かし、今日の北海道における道路のあり方について追求してこられました。今回は、北海道における広域道路交通の課題や冬期における道路についてご講演をいただきました。
<講演要旨>
北海道は広大な大地に多くの市町村とたくさんの道路があり、北海道人の感覚では「一日に200~300kmの移動はあたりまえ」といったことがよくある。また、北海道は常に「交通事故死ワーストランキング」は上位であり、そこからの脱却が常日頃の課題である。この対策として、米国の州際道路(インターステートハイウエィ)の居眠り路外逸脱防止に実績のあるランブルストリップがある。
北海道で平成14年度に初めて設置されてから、平成25年3月末で 46路線 989km に設置され、正面衝突事故対策として大きな貢献を果たした。
確かに、長時間運転をしていると居眠りではないのだが、時々、この冬ランブルストリップを踏んで、「ハッ」として、ハンドルを握り直すことがある。
他の対策として、日本では導入事例が極めて少ない、ラウンドアバウトがある。
ラウンドアバウトは円形の交差点であり、流入車両に対して「ゆずり合い」が生じ、出会い事故の防止や停止時間の短縮による環境負荷の低減など、様々な課題に大いに役立つものと期待されている。
ただし、我が国はもともとラウンドアバウトを導入する考えで都市を構築していないため、導入には都市の機能上、あるいは土地利用上の課題がある。
次に、寒冷地道路の特色として、スパイクタイヤ導入の歴史がある。ヨーロッパで適用実績の多い、「凍結防止剤の導入」もそのひとつ。スタッドレスタイヤが普及する中で、凍結防止剤の散布は飛躍的に寒冷地における交通事故の減少に寄与している。凍結防止剤は塩化カルシウムを含んでいるので、事故の減少にはつながるが、車両がサビやすくなるのも大きな懸念材料である。
浅野講師による講演
ランブルストリップ
(講演者配布資料より)
ラウンドアバウト
(講演者配布資料より)
■講演2
武山講師は、北海道総合企画部交通企画課で空港政策に携わった後、北海道空港株式会社に出向・退職し、現在の武山事務所の代表として活躍されています。
今回は、LCCがもたらす新たな北海道と丘珠空港の役割についてご講演を頂きました。
<講演要旨>
LCCは低価格かつサービスが簡素化された航空輸送サービスを提供するもので、ローコストキャリアの略称で、最近よく聞くワード。我が国におけるLCCは大手航空会社の傘下にあるため、各主要都市を結ぶ便が主となっており、便数も少なく、さまざまな制限がある。
アメリカやヨーロッパでは、日本とは異なる方法で運営しており、ローカル線の運航が主体となっている。多くの便数を運航し、稼働率を上げ、多くの人々を輸送する方法をとっている。
ローカル線を多くの便で運用するため、その利用目的の多くは、Visited(訪問)、Frend(友人)、Return(帰省)であり、地域の人々にとって、低廉で利用しやすく、多くの交流が生まれる。
次に、丘珠空港のあり方についてであるが、現在丘珠空港の離発着は、北海道エアシステム(HAC)と日本航空(JAL)があり、道内を中心に運航し、本州を結ぶ青森県三沢市へもフライトをしている。
丘珠空港を離発着する航空機はプロペラ機であり、以前、滑走路延長(現滑走路延長1,500m→1,800m)に伴うジェット機導入の計画があった(ジェット機は滑走路が最低でも、1,800mないと飛べない)。
しかし、騒音問題などで地域住民の反対を受け、過去に導入を断念した経緯がある。
LCCの世界的拡大や東南アジア・ASEANの市場開放がある中、地域の活性化を図っていくには、丘珠空港におけるジェット機導入が必要。これにより北海道にさらに多くの観光客を呼び込むことが可能となり、本道経済の活性化につながる。
武山講師による講演
■おわりに
今回は、陸と空の交通網にまつわる講演でした。北海道は広大で観光資源も豊富にありますが、各地方都市を結ぶ交通網には季節的課題や維持管理・コスト面の課題など、まだまだ解決していかなければならない課題が多くあると感じました。今後も北海道スタンダード研究委員会は様々な勉強会を開催していく予定です。皆さんの勉強会へのご参加をお願いたすとともに、今後とも引き続きご支援の程よろしくお願いします。
(文責 副幹事長 樋詰 透)